現在、リハビリの方法は無数に存在します。
ただリハビリの効果が思うようにあがらない原因は…
それとも技術が未熟だからでしょうか?
どちらも全く関係ないとは思いませんが、私の考えとしてはリハプラン自体に無理があることが一番の原因のように思えます。
仮に新人のセラピストであっても適切にリハプランが立案できれば、ある程度の効果をあげることが可能だと考えています。
むしろ技術が不十分なときほどプラン二ングで技術をカバーする必要があるのではないでしょうか?
このブログではリハプラン立案の基本となる考え方をお伝えしていきます。
※あくまでも個人の見解です。
リハプラン立案のために、まず必要なのが目標設定になります。
長期目標と短期目標が同じになっていませんか?
今回は目標設定の重要性と方法についてお伝えできたらと思います。
目次
目標設定の重要性
①適切な目標設定
- 理想に近づくことを実感できる。
- 患者様の負担が少ない。
- 成功体験を繰り返すのでモチベーションがあがる。
- 安心感を与える。
②不適切な目標設定
- 毎日同じメニューを繰り返し変化に乏しい。
- 患者様の負担が大きい。
- 変化がないためモチベーションがあがらない。
- 不安感が増す。
目標設定が曖昧な場合、具体的な道筋はわかっておらず、実施していることが本当に適しているかの判断も難しいかと思います。
前もって決めた方法をただ実施することだけが目的になっていないでしょうか?
目標設定は病気や怪我をされた方にとって、再び人生を前向きに歩んでいくための道しるべになります。
躓くことなく目標に向かっていけるようなリハプランが信頼を深め、回復をはやめるように思います。
次は目標設定の方法についてです。
目標設定のツボ
1.長期目標のツボ
①-1.ICF(国際生活機能分類)で全体像を把握する
ICFとは2001年にWHO(世界保健機関)が提唱した、国際機能分類(International Classification of Functioning ,Disability and Health)の略称。健康状態、心身機能、障害の状態を相互影響関係および独立項目として分類し、当事者の視点による生活の包括的・中心的記述をねらいにする医療基準
wikipediaより引用
ここからはわかりやすくなるように例題もあげながら説明していきます。

例:A様の全体像
70歳代の女性で転倒により左大腿骨頸部骨折を受傷。人工骨頭置換術を施行し、術後1ヶ月で現在は歩行器歩行で病棟内自立。独居の方で受傷前は自宅から200ⅿのスーパーへ独歩で買い物へ行っていた。
①-2.疾患の特性や痛みについて把握する
- 疾患の特性
- 痛みの分類
- 禁忌事項
上記のような決まりを確認しておかないと機能改善が難しい部分へアプローチしてしまう可能性があります。
特に禁忌事項が守れていない場合、リハビリにより状態を悪化させる恐れもあります。
例:大腿骨頸部骨折(人工骨頭置換術)の理解
①人工骨頭置換術による影響
- 大腿筋膜張筋の切開
- 大殿筋の切開
- 深層外旋六筋の切離
②痛みの分類
- 骨折による痛み:股関節近位部の痛み(多くは1週間程度で軽減)
- スパズムによる痛み:股関節内転筋群の緊張
③禁忌事項
- 過度の股関節屈曲・内転・内旋
①-3.ICFから大まかな道筋を決める
疾患や痛みの特性を考慮してICFの情報を整理することで長期目標への大まかな道筋を決めます。
例:A様の大まかな道筋
患側下肢の筋力向上によりバランス能力を改善し、屋外が独歩自立。自宅から200ⅿのスーパーでの買い物が可能となる。
②5W1Hで具体的にする
5W1Hは意図を完結にまとめるための基本のフレームワークになります。
これに当てはめることで目標設定が具体的かどうかを判断することができます。
ここではメジャーメントを決めて最終目標となる数値まで設定しましょう。
When :いつ(期限)
Where:どこで(場所)
Who :だれが(関係する人物)
What :何を(課題、問題)
Why :なぜ(理由)
How :どのようにして(評価・治療方法、環境設定)
When :2ヶ月で
Where:院内、病院の敷地内
Who :対象者
What :患側下肢で片脚立位10秒可能なバランス能力獲得。屋内外を独歩で200ⅿ程度安定して歩行ができる。
Why :退院後、自宅から200ⅿ離れたスーパーへ買い物に行きたいため
How :大殿筋、大腿筋膜張筋、梨状筋の筋力向上から歩行能力改善につながるようにアプローチを進める。
例:A様の長期目標
2ヶ月には大殿筋、大腿筋膜張筋、梨状筋の筋力が改善し、患側下肢での片脚立位保持が10秒程度可能。屋外200ⅿ程度を安全に独歩可能な歩行耐久性、バランス能力の獲得により、退院後は自立した生活が送れる。
2.短期目標のツボ
長期目標に近づいていくための段階付けを考え、最初の通過点を決める作業が短期目標の設定です。
対象者が無理なく通過していけるように設定することで早く長期目標に近づきます。
①回復へ向うための順序を理解する
短期目標設定の前に長期目標で設定した身体機能と活動についての回復順序を考えます。
自分の感覚だけではなく、医学的根拠に基づいた段階付けになる必要があります。
なるべく詳細に設定し、少ない負荷を短い期限で次々達成できる方が長期目標に近づきやすくなります。
やさしく介入するための、最初の通過点を探る作業といえるでしょう。
例題
- 得意な運動から苦手な運動
- 両側性の運動から片側性の運動
- 体幹の筋活動から四肢の筋活動(予測的姿勢制御)
- 遅筋の筋活動から速筋の筋活動(サイズの原理)
- クローズドループからオープンループ…など
登山でいう安全なルートを前もっていくつか決めておいて登っていくのと似ている気がします。
余談になりますが、目標がなくなった下山するときの方が事故が多いそうです…
例:A様の長期目標までの段階
現状から2ヶ月後の片脚立位10秒、屋外独歩につながるように身体機能と活動の回復段階を考えてみます。
第一段階
- 立位バランス:均等な荷重での立位
- ADL:立位での整容(歯磨き、洗顔)
第二段階
- 立位バランス:立位で患側下肢への重心移動
- ADL:立位で患側下肢へのリーチ
第三段階
- 立位バランス:健側下肢を後方にしてのステップ位
- ADL:健側への方向転換
第四段階
- 立位バランス:患側下肢を後方にしてのステップ位
- ADL:患側への方向転換
第五段階
- 立位バランス:手摺ありで健側下肢を台に挙げて保持
- ADL:立位で靴を履く
第六段階
- 立位バランス:手摺なしで健側下肢を台に挙げて保持
- ADL:立位でズボン、靴下を履く
最終段階
- 立位バランス:患側下肢で片脚立位10秒
- ADL:屋外での安定した歩行
身体機能とADLが一致して長期目標に向かうように大まかな道筋を立ててみました。これをもとに短期目標を具体的にしていきます。
②5W1Hで具体的にする
長期目標につながる最初の段階が決まったら、期限と指標を決めて具体的にしていきます。
When :1日で
Where:病室の洗面所
Who :対象者
What :両側下肢へ均等に荷重しての立位保持が10分程度可能となることで歯磨き、洗顔動作が改善する。
Why :日常生活において患側下肢で荷重する機会を増やすため
How :患側の股関節周囲筋MMT、ファンクショナルリーチテストを指標にアプローチを開始。
例:A様の短期目標
患側下肢の支持性を向上し、1日で均等な荷重での立位保持が10分程度可能となる。よって病室では歯磨き、洗顔が歩行器や台にすがることなく実施可能となる。
目標はあくまでも仮説なのでこれを基に評価、検証しながらリハビリを進めていきます。
あとは前もって決めた順序に沿ってフィードバックしながら進めていくとよいでしょう。

最後までご観覧いただきありがとうございました。
この記事が臨床で悩むセラピストの一助となれば幸いです。