マネジメント

セラピストの問題解決能力を高めるクリニカルリーズニング(臨床推論)のツボ

リハビリの実施にあたり

「一度アプローチを決めたら、なかなか変更できない。」

「アプローチを前もって決めておかないと不安。」

ということはありませんか?

事前に準備しておくことはとてもいいことですが、その時の対象者の状態に応じてアプローチを実施することも必要です。

リハビリ実施中に対象者へ不安を与えず、評価・アプローチを変更することは大変な作業ですが、状態に合わないアプローチでは効果が期待できません

リハツボ
リハツボ
リハビリをセラピストの方法主体ではなく、対象者主体で進めるにはクリニカルリーズニングのスキルを高める必要があります。

今回はクリニカルリーズニングの重要性と実践方法についてお伝えできたらと思います。

仮説思考と網羅思考

問題解決のアプローチとしては、仮説思考と網羅思考があります。

1.仮説思考について

目標設定をしてから情報を集める、トップダウンのアプローチ方法です。

限られた情報から最も可能性が高いと思われる結論を仮説として設定して行動する思考法です。

仮説を設定するために、情報を絞り込む必要がありますが、それができれば非常に効率よく問題解決を進めていくことができます。

これがクリニカルリーズニングに必要な思考になります。

メリット

  • 意思決定が速い。
  • 思考に柔軟性がある。

デメリット

  • 情報の選択が難しい。
  • 主観的になりやすい。

2.網羅思考について

情報を集めてから目標を考える、ボトムアップのアプローチ方法です。

集めた情報から最も理想に思われる目標を設定して、行動を決める思考法です。

目標設定するための情報収集のはずが、情報収集すること自体が目的となっていることもあります。(手段の目的化

決断が苦手な方の場合、たくさん情報収集する方が安心ということもあるように思います。

メリット

  • 情報の漏れが少ない。
  • 多角的に考えやすい。

デメリット

  • 意思決定に時間がかかる。
  • 不必要な情報まで収集することがある。

網羅思考で多角的に考えて準備することも必要ですが、リハビリ中の予想外の反応は仮説思考にならなければ対応できないように思います。

対象者主体のリハビリへシフトする手段の目的化を防ぐツボ 実施しているリハビリ方法について 「セミナーでいい方法を教えてもらったけど実際にやると効果が出ない。」 「...

クリニカルリーズニング(臨床推論)のツボ

1.クリニカルリーズニングについて

クリニカルリーズニングとは、”対象者の訴えや症状から病態を推測し、対象者に最も適した介入を決定していく一連の心理(認知)的過程”を指します。

仮説思考のデメリットである情報の漏れや主観的になることを防げるように、枠組みを決めておきます。

クリニカルリーズニングの項目

①生活や社会参加を妨げる機能面の問題(この中から2〜3つに絞り優先順位を決める)

  • 筋緊張:高緊張、弱化、萎縮、短縮など
  • 運動:分離運動、共同運動、連合反応など
  • 感覚:表在、深部など
  • 知覚:感覚統合、身体図式など
  • 精神機能:意識、感情など
  • 認知機能:記憶、遂行機能など
  • 身体構造:欠損、変形など

全ての項目を観察する習慣を持つことで漏れを無くします。

②効果判定のための評価

  • 量的評価:数値化できる評価
  • 質的評価:内容を重視した評価

③大まかな目標設定(活動や社会参加での目標設定)

  • 長期目標(予後予測):1ヶ月以上必要な全体課題。
  • 短期目標:1週間以内に達成する部分的課題。その日に達成することで目標に近づくことが見込まれる課題(24時間コンセプト)。

※身体機能のみで目標設定すると生活へのマネジメントが不十分になりやすいです。

24時間コンセプトで対象者の生活を考えます。

24時間コンセプトとは

“機能的な回復を最大限にするために建設的な学習環境を促進することを狙いとした概念”

対象者の24時間(1日の生活)を考慮してアプローチすることで、生活の中でリハビリの効果が繰り越します。

このマネジメントができれば、リハビリの間隔が開いても機能改善が可能です。

リハビリ効果を持続させる24時間コンセプトのツボ 「リハビリがなかなか生活動作の改善につながらない。」 「どうすれば生活動作を効率良く改善できるのか知りたい。」 ...

2.クリニカルリーズニングの実践例

症例A様、70歳代の女性

  • 疾患名:左大腿骨頸部骨折(人工骨頭置換術後1ヶ月)
  • 既往歴なし
  • 現在の生活:病棟内は歩行器歩行自立、浴室での移動が軽介助
  • 病前の生活:独居。自宅から200ⅿ離れたスーパーへ独歩で買い物へ行っていた。

事前に必要な情報収集

  • リスク管理:現病歴、既往歴
  • 目標設定:現在の生活での問題(ニード)、病前の生活や社会的役割(デマンド)など

ニードを満たして信頼関係を構築しながら、デマンドを達成できるように進めていきます。

①生活や社会参加を妨げる機能面の問題

なぜ移動に歩行器が必要か、疾患特性も考慮して評価しながら介入

  • 筋緊張:殿筋群の弱化
  • 運動:股関節戦略での代償的姿勢制御

②効果判定のための評価

  • 量的評価:左股関節周囲筋のMMT、ファンクショナルリーチテスト
  • 質的評価:立位姿勢、歩行分析、ファンクショナルリーチテスト

③大まかな目標設定

  • 長期目標:独歩で近所のスーパーへの買い物が可能になる。
  • 短期目標:病室の洗面台での整容動作が両側立位で可能、歩行器にすがることなく歩行が可能(24時間コンセプト)になり、1週間程度で杖歩行へ移行する。

アプローチの時間配分

前半:疾患特性やニードを元にアプローチを実施しながら①〜③を決める。

後半24時間コンセプトで仮説・検証を繰り返す。

リハビリ後でもよいので、機能面の問題を限定するほど、ピンポイントでのアプローチが可能になります。

社会参加を重視したリハビリ目標を設定するICF活用のツボ 現在の医療ではICF(国際機能分類)をもとに情報整理、情報共有することが基本となっていますが… ...

今回は私自身がリハビリ中に考えていることや事前に準備していることを考えながら書いてみました。

セラピストが実施したい方法を当てはめるのではなく、対象者主体で親身に考えることが奇跡を起こすような気がします。

最後までご観覧いただきありがとうございました。

この記事が臨床で悩むセラピストの一助となれば幸いです。